心映えるスイーツを求めて

豊かな海と山に恵まれた食の都である三重県。

伊勢海老や鮑、松阪牛など世界に誇れる食材が数多く存在するなか、地域性豊かな素材を活かした魅惑スイーツもたくさんある。

今回はそんな素材の魅力を気軽に愉しめる、フォトジェニックなスイーツを3点ピックアップ。食の宝庫・三重ならではの甘いハーモニーを求め、カメラ片手に出掛けよう。

———小麦粉の概念を覆される!?桑名もち小麦を味わえる「MuGicafe」

最初に訪れたのは、桑名駅から徒歩15分のところにある「MuGicafe」。

MuGicafe外観

桑名は木曽三川(木曽川、長良川、揖斐川)が伊勢湾に注ぐ河口に位置し、かつて江戸から京を結んでいた東海道五十三次の宿場町。伊勢の国への玄関口として栄えた街である。

MuGicafeで味わえるのは、桑名で栽培されている「桑名もち小麦」を使ったメニュー。



MuGicafe店内
▲昭和初期の古民家を改築した店舗。

もち小麦とは、1995年に日本が世界に先駆けて創出した新品種で、でんぷん質にもち性を持ち、粘りと弾力が特徴の希少な小麦粉のこと。

その特徴を生かしたスイーツがこちら。
ふっくらと焼きあがった「桑名もち小麦パンケーキ」。

桑名もち小麦パンケーキ

見た目からスフレのような淡い生地を想像したが、口に入れると、餅のように弾力のある食感に驚かされる。
もっちりと食べ応えのある生地。噛むほどに小麦粉の旨みが広がる。

生クリームと共にかけられた桑名産の蜂蜜「九華はちみつ」が演出するまろやかさが、また独特の食感を引き立てる。

これは小麦粉の概念を覆される新食感だ。

「お米に“もち米”があるように、小麦粉にも“もち小麦”があるのです」

そう教えてくださったのは、MuGicafeのオーナーで、小麦粉などの食材販売「素材舎」を営む保田与志彦さん。桑名もち小麦を広めるための「桑名もちプロジェクト」の発起人である。

保田与志彦さん

———桑名もち小麦プロジェクトとは

2008年。食材販売を行っていた保田さんは、卸売業の存在意義を模索する中、津市の製粉業者を通して出会ったもち小麦の独特の食感に衝撃を受けた。
既に津市では栽培されなくなっていたもち小麦を桑名で育て、ひいてはもち小麦を通して桑名という街の認知度を上げられる名物にしたいと、米農家とパンの製造販売者との3人で立ち上げたのが桑名もち小麦プロジェクトだった。そして翌年からもち小麦の試験栽培がスタートした。取材に同席いただいた、米農家であり桑名もち小麦を生産する伊藤宏幸さんは当時をこう振り返る。

伊藤さん:小麦は作ったことがなく、田んぼを畑に変えるところからスタートしました。

伊藤宏幸さん
▲プロジェクトメンバーである今安ライスセンター9代目 伊藤宏幸さん。

小麦は元来乾燥した気候に適した作物であるため、湿気の多い日本の気候にはあまり適していない。ただ水路を必要とする稲作と比べて、場所を選ばず栽培できる麦作の生産量は近年増加傾向にあり、安心安全面と環境や風土に合わせた美味しさを持つ国産小麦の需要も高まっている。

桑名もち小麦プロジェクトとしても、パンやケーキのように様々な食べ物に変化する小麦粉は、多くの人が関わることができるため、桑名の名産物として普及する可能性を感じ、試行錯誤を重ねた。保田さんがアンテナショップとして「MuGiCafe」をオープンさせたのは2014年のことだった。

現在では特徴ある新食感が評判となり、クラフトベーカリーを通して首都圏にも広まりつつある桑名もち小麦。

やみつき必至のもちもち食感、ぜひ味わっていただきたい。


■訪問のお土産には...

桑名もち小麦の「麦ストロー」。環境に優しく懐かしい口当たりが愉しめる。

桑名もち小麦の「麦ストロー」

■近隣の観光スポット「七里の渡

かつて東海道の宿場町として賑わいをみせていた桑名。七里の渡にある大鳥居は、伊勢路の玄関口にあたり「伊勢国一の鳥居」と称されている。


———ワンハンドスイーツの王様!伊勢茶味わうカリッとクレープ「KILLIBILLI」

2軒目にご紹介するのは、伊勢市駅から徒歩3分。
本格的なクレープが食べられると人気のCREPE,CAFE&BAR「KILLIBILLI」。

2015年に老舗居酒屋「鳥羽 久兵衛」を営むオーナーによって鳥羽市に一号店が誕生。伊勢店は二号店として2017年にオープンした。

KILLIBILLIとはオーストラリアのアボリジニーの言葉で「良い釣りのポイント」という意味。オーストラリアで暮らしていた経験のあるオーナーが、海の街である鳥羽との環境を重ねて命名した。

KILLIBILLI

季節に合わせた地元産の食材を取り入れたクレープやドリンクのメニューが並ぶ中、今回は伊勢店限定のクレープ「伊勢茶モンブラン」をセレクト。

クレープ生地には、南伊勢町にある南勢養鶏の卵と三重県産の小麦粉あやひかりを使用。あやひかりを使うことでモチッとした食感のクレープが仕上がるのだそう。

クレープ調理風景

風味付けの有塩バターが塗り込まれると、店内に香ばしいかおりが広がる。

クレープ調理風景

「表面はパリっと中はふんわりとした食感を追及し続け、極めたという焼き加減なんです」と店主の鳴川真俊さんは笑顔で話す。

クレープ調理風景

伊勢にある老舗お茶屋の木下茶園の伊勢茶で作ったクリームをたっぷりと乗せ、伊勢茶パウダーで仕上げていく。

鳴川真俊さん
▲伊勢店の店主、鳴川真俊さん。

完成した「伊勢茶モンブラン」がこちら。

伊勢茶モンブラン

濃厚で芳醇な伊勢茶クリームに、少し塩気のあるパリっとした生地が絶妙。
餡子と白玉との相性もちょうど良い。
仕上げにかけられた伊勢茶パウダーによって、風味だけではなく伊勢茶本来のうまみに欠かせないほろ苦さまでが愉しめる味わいとなっている。

お伊勢さん散策のお供にも最適なワンハンドスイーツ。


■訪問のお土産には...

「伊勢木綿アクセサリー」
地元クリエイターが作る伊勢木綿のピアスやイヤリング。

伊勢木綿アクセサリー

■近隣の観光スポット「伊勢神宮

二千年の歴史を有し、内宮・外宮をはじめ125の宮社からなる神社。


———伝統的な製法で作られた魅惑のスイーツ「上田商店」

芋蜜ソフト

3軒目に訪れたのは、志摩市阿児町。
漁業が盛んな安乗地区にある1974年創業のきんこ芋工房「上田商店」。

上田商店外観

きんこ芋とは干し芋の呼び名。志摩地方には煮切干製法という伝統的な製法で干し芋が作られており、昔から海女や家庭のおやつとして親しまれていた。上田商店はその原料芋からこだわって栽培している芋農家だ。

海に囲まれミネラルをたっぷりと含んだ土壌は上質なさつまいもを育て、陽あたりがよく岬特有の寒風が吹く安乗地区は甘みを引き出す天日干しにも適している。先代は極上といわれるきんこ芋を、もっと地域外にも流通させたいという想いで量産化に踏み出した。

現在、二代目と共に上田商店を営む娘の橘麻衣さんはこう話す。

橘さん:高湿で温暖な志摩の気候のなか、水分量の多いきんこ芋の品質を維持しながら量産化する事はとても難しく、独自の製法を生み出すまで約6年かかりました。

橘麻衣さん
▲専務取締役 橘麻衣さん。

その極上なきんこ芋を使ったスイーツが、こちらの「芋蜜ソフト」だ。

芋蜜ソフト
▲ワッフルコーンかカップを選択できる。今回はカップで注文。

芋蜜とは、さつまいもを10時間以上煮詰めて作られるきんこ芋の生産の過程でできる希少なシロップ。砂糖や甘味料は一切不使用で、約100個のさつまいもからとれる芋蜜は、なんとわずか250ミリリットルなのだそう。

その芋蜜がたっぷりとかけられたソフトクリームは濃厚で、ミルクと芋のコクが相乗効果となって深い味わいとなっている。添えられたきんこ芋のチョコレートコーティングとチップスによる食感のコントラストも楽しい。

こちらは「芋蜜のムースプリン」。

芋蜜のムースプリン

芋蜜のクリーミーなプリンの上に、もっちりと柔らかなきんこ芋が乗り、さつまいも本来の甘さを堪能できる。

とろける味わいにほっとひと息つきたくなる一品。


■訪問のお土産には...

安乗岬の安乗神社の「波乗守」
サーフィンや漁業、また人生において「いい波に乗れるように」と祈祷されたお守り。

波乗守

■近隣の観光スポット「安乗埼灯台

「日本の灯台50選」にも選ばれている、珍しい四角形の灯台。


五感を刺激し、至福の喜びをもたらしてくれるフォトジェニックなスイーツ。
それは素材の魅力が存分に惹き出された珠玉の逸品。

帰り道、思わずシャッターを押した写真を見返すと、この日触れた作り手の熱い想いと共に、全身に染み渡った幸福感が甦ってきた。



(2018年11月22日、27日取材)
企画編集:三重に暮らす・旅するWEBマガジンOTONAMIE運営本部
取材:福田ミキ(OTONAMIE副代表)

取材協力

MuGicafe
三重県桑名市京町42
Tel 070-5335-9871
HP http://mugicafe.jp/



CREPE,CAFE&BAR KILLIBILLI 伊勢店
三重県伊勢市吹上一丁目6-34 サンサンビル1階
Tel 0596-68-9084
HP https://www.instagram.com/killibilliise/



きんこ芋工房 上田商店
三重県志摩市阿児町安乗1076-2
Tel 0599-47-3517
HP http://kinkoimo.com/

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