フォトジェニックやインスタ映えという言葉が、広く使われるようになり、私もスマホで料理などを撮影するときに意識するようになった。
女子力高めの友人が、映える手料理をInstagramにアップしている。
聞くと地元(三重)のこだわり素材をふんだんに使っているらしい。
???こだわりって、何だろう。
記者として、また彼女に憧れる女子のひとりとして、今回はそんな彼女の使っているこだわり素材の秘密を探っていきたいと思う。
今回の料理の素材は、県がおすすめするこだわり商品「みえセレクション(三重県)」に選ばれている事業者のものを取り入れているとのこと。
???素材の秘密①「カラフルで体思いのフルーツビネガー」
まずは、料理に使われているビネガーシロップを作っている御浜町の株式会社MIKURAの醸造蔵を訪ねた。
MIKURAでは玄米黒酢「玄(しずか)」や酒粕赤酢「潤朱(うるみ)」などを中心に製造。
木桶で玄は180日、潤朱は40日、じっくりと時間を掛けてこの地域に伝わる製法でお酢を作っている。
福井さん:果実や米からお酒ができ、お酒からお酢ができます。お酢は放っておくと水になります。微生物が作用してそのように変化するんです。微生物の中でも主に酢酸菌が作用してお酢は作られます。ここには木桶や大気中に酢酸菌以外の菌もいて、その菌の作用で深みがあり角のないまろやかな味わいになります。酢酸菌だけで作るお酢もあるのですが、ただ酸っぱい調味料になってしまいます。
早速試飲させていただいた。あれ?味がある!
福井さん:分かりやすく例えると、上白糖と黒砂糖みたいな感じです。ここのお酢は黒砂糖みたいに味わい深いです。
お酢を知り、次は個人的に注目していた、MIKURAの醸造酢(赤酢、黒酢)と三重県産のフルーツなどの素材で作ったビネガーシロップ「Sweet Vinegar MIKURA」。
ビネガーシロップは、都市部の百貨店やオンラインショップでも販売され、最近販路を拡大している。
伊藤社長に、ここのビネガーシロップの特長を伺った。
伊藤社長:じっくりと時間を掛けて醸造したお酢を使っているので、ビネガーシロップは最後までしっかりとお酢の味が残ります。
通常のビネガーシロップは封を開けてしばらくはお酢の味があっても、時間が経ち使い終わる頃、ただ甘いジュースのような液体になっていることも珍しくはない。
しかしそのような味の劣化が少なく、添加物を一切使っていないこれらの商品は、健康に関心のあるリピーターも多いという。
御蔵酢醸造元 株式会社MIKURA
本店/醸造蔵:三重県南牟婁郡御浜町阿田和2266
管理本部:三重県四日市市鵜の森1丁目12-16
Tel 05979-3-1660
HP https://kumano-mikura.jp
オンラインショップ https://mikurasu.shop-pro.jp
???素材の秘密②「三重県熊野市にのみ存在する柑橘、新姫の果汁」
野菜サラダに使われていたのは、新姫の果汁。
新姫は熊野市新鹿町で偶然発見された、ヤマトタチバナと温州ミカンが自然交配して生まれた新種の柑橘と言われている。
新姫の果汁などを手がける、(一社)熊野市ふるさと振興公社(以下、公社)の今西さんにお話をお聞きした。新姫はどんな味なのだろう。
今西さん:すっきりとした酸味と皮ごと絞るので程よい苦味があり、同じ香酸柑橘のスダチより酸味がやさしく、香りがいいです。
新姫果汁は焼き魚や焼肉などに少しかけたり、ドレッシングにするなど様々な愉しみ方がある。
熊野市では高齢化が進み耕作放棄地が地域課題となっているが、そういった畑などでも新姫は育てられており、市から生産者に苗木を提供することで一次産業の活性化、産業化に取り組んでいる。
今西さん:新姫が広がることによって、少しではありますが地域の発展にも繋がります。
実際に新姫の加工場まで、今西さんにご案内いただいた。
湯ノ口温泉まで走るトロッコ列車の駅の近くに加工場はある。
新姫は洗う作業から一貫生産体制の製造ラインで作られる。
今西さん:地域の産業の一つとして、何とかしたいと考えています。
新姫はG7伊勢志摩サミットを機に、大手スーパーとケーキフェアでコラボ展開するなど注目も高まっている。
地域を変えるかも知れない新姫のシンデレラストーリーはまだまだ始まったばかりだ。
新姫果汁は、熊野市ふるさと振興公社のオンラインショップや東紀州エリアの道の駅、三重テラス(東京・日本橋)などで販売されている。
一般財団法人 熊野市ふるさと振興公社
三重県熊野市紀和町板屋78
Tel 0597-97-0640
HP http://www.kumano-furusato.com
オンラインショップ http://www.kumano-furusato.com/shop/niihime.html
???素材の秘密③「食べやすく、スタイリッシュな干物」
南伊勢町で開発され、今では都市部の百貨店やJALの新JAPAN PROJECTでも販売される串ひものは、どのような経緯で作られることになったのだろうか。
串ひものを開発した販売元、(有)山藤の山本社長にお話を伺った。
山本社長:6年くらい前に、学校給食のメニューとして開発したのが始まりです。
山本さんは、以前県の売れる産品づくりのためのアカデミーに参加し、最初は干物茶漬けの開発をしていたが専門家の先生のアドバイスなどを聞いているうちに「自分の作りたい物は、やっぱり干物だ」と思い、干物が敬遠される事を考慮し試行錯誤。
アカデミー参加前から、学校給食の魚の納品依頼を受けており、栄養士さんから骨を取り除くようにと毎回注文があった。なので串ひものを開発する前から、骨を取り除く技術があった。
山藤が提供した小中学校の給食の魚は食べ残しが少なかったと山本さんは続けた。
山本社長:お客さんから串ひものは「便利やなー」とよくいわれます。
それにしても宣材のデザインもスタイリッシュ。山藤のロゴは社長のトレードマークであるひげがモチーフだ。
串ひものには冷凍の生タイプとそのまま食べられる焼タイプがある。
1枚1枚丁寧に手開きし骨を取り除く。串ひものには伊豆大島の伝統海塩(海の精)を使用し、主に天日で他社より長い時間ゆっくりと干し、中まで味を染み込ませる。そして串をさし、焼タイプは加工場で手焼きしてから、真空パックに入れて加熱処理を行う。
串ひものは主に山本社長と息子さんが担当し、多くても一日に1,000袋の生産が限界だという。
山藤では他の干物なども生産していると聞き、元はかつお節の加工場だった場所へ案内していただいた。
加工場は朝の8時から6名くらいで稼働し始め、一日約1,000枚の魚を主に旅館の朝食用の干物に加工している。
山本社長のお母さん:昔は伊勢志摩の旅館一軒一軒に営業に行ってね。冬場は手が冷たくて。ここは寒いでしょ。コーヒーでも入れますね。
コーヒーをいただきながら、ふと思った。
干物だけ見ていても分からないが、ここは時代に合わせてイノベーションを起こしている。
かつて地域にあった鰹節屋の数は今では激減している。それを見据え、旅館の朝ご飯に着目し水産加工屋に転身。そして利便性やデザイン性が求められる現代。串ひもので時代の変化に対応した現在の社長。
伊勢湾と熊野灘という二つの海を持つ三重県では、様々な魚種が水揚げされる。そして三重県産の魚を使った串ひものでは、様々な魚種の干物が愉しめる。
串ひものは山藤のホームページやJALショッピングのホームページ、三重テラス(東京・日本橋)などで販売している。
有限会社 山藤
三重県度会郡南伊勢町田曽浦3907-1
Tel 0599-69-3489
HP http://www.yamatou.net
???映える!料理と冷蔵庫?
私もこの食材を使ってみたい。改めてきっかけとなったあの料理を教えてもらうべく、彼女のおうちへお邪魔した。
ちゃっちゃと慣れた手つきで手料理を仕上げていく友人。
友人:串ひものの焼タイプはそのまま食べられるんだ。もう少し時間が掛かるから、先にこれをつまんどいて。
串ひものを食べながら友人を眺め、そして完成した、写真映えする手料理。
女子力高めの友人に軽い嫉妬心を感じながらの帰り道。私は深く心に刻んだことがある。
それは「女子力を磨こう」ということだ。私も彼女のように、こだわり食材でお洒落なテーブルコーディネートを楽しみたい。
料理に使った調味料のビンは料理だけでなく、冷蔵庫をも華やかに見せてくれた。
手料理の腕は、まあ明日くらいからボチボチ鍛えるとしてとりあえず、すぐに食べられる串ひものをつまみにビールを一杯。取材で巡った自然豊かな美しい景色の余韻に浸りながら、干物片手にうとうとと眠りについたのであった。
(2018年11月26日、28日取材)
企画編集:三重に暮らす・旅するWEBマガジンOTONAMIE運営本部
取材:福田ミキ(OTONAMIE副代表)
みえセレクションHP http://www.pref.mie.lg.jp/CHISANM/HP/mieselection/index.htm