水がすべてを決めるのです!
三重がうまし国と言われる本当の理由とは?

 

三重県には、おいしい食べ物が多い。「うまし国」とも言われている。10世紀ごろの法律書である「延喜式」には、志摩地方は10日毎に あわび、さざえ、海藻、真珠などを、朝廷に納めることが定められていたという。
伊勢海老に代表される海産物や、日本が誇るブランドである松阪牛や伊賀牛、伊勢志摩サミットで使われブレイクした地酒など、多彩な食材に恵まれた食の宝庫といえる地である。

今回は、そんな”うまし国三重”を育むみなもと、「水」について取材した。

———原料となる鈴鹿川の伏流水は「良質な軟水」 。

キンミヤ焼酎

「下町の酒場を支える名脇役」として知られる焼酎が、四日市市楠町で作られている。その名を「キンミヤ」という。

宮の雪

古くから、灘の清酒、楠の焼酎といわれたこのエリアでの酒造りの起源は焼酎とみりんとされるが、日本酒の製造も盛んである。

鈴鹿川の伏流水である良質な軟水が地下に流れ、冬には鈴鹿山脈から「鈴鹿おろし」と呼ばれる寒気を運ぶ風が吹き、酒づくりに適した風土である。

酒蔵

そこで今回は、蔵元の代表である宮﨑由至さんにお話しを伺った。

———キンミヤの味は、水の味。

日本の焼酎は、製法の違いから、「甲類」「乙類」に分類される。キンミヤなど「甲類」の焼酎は、主にサトウキビなどから作られる糖蜜を原料とし、何回か蒸留を繰り返してつくるため、癖のない味わいが特徴なのだが、反面、個性が薄いとも言える。

ところが、キンミヤは数多くある焼酎の中でも人気が高く、名の通った銘柄となっている。その違いはどこにあるのだろうか。

蔵元代表 宮﨑由至さん

蔵元代表 宮﨑由至さん

宮﨑さんに、キンミヤの味について尋ねると
「キンミヤは、水の味なんです。」
と、即答いただいた。

なるほど。鈴鹿川の伏流水である「良質な軟水」がキンミヤの味ということだ。
何とも「シンプル」な理由であるが、人気商品に欠かせない力強いストーリー性を感じる。もう少し、その「シンプル」な理由を深掘りしてみた。

———シンプルな事ほど、マネできない。

「ここから150mも違えば、きっとキンミヤや日本酒造りに欠かせない、良質の伏流水は採取できないのではないかな。」
と宮﨑さんは言う。

キンミヤの昔の看板

酒造りが始まったころ、硬水や軟水という概念はなく、先人から受け継がれてきた知識をもとに行っていたのではないだろうか。現在のように水質をデータで調べるということも、もちろんなかったことだろう。先人が長い時間をかけて蓄積してきた知識。そこには「酒造りに最も適した地下水が採取できる場所」の知識も含まれていたのかもしれない。

酒蔵を案内していただいた、社内杜氏の長谷川さん。
酒蔵を案内していただいた、社内杜氏の長谷川さん。

「日本酒は米・麹・酵母・水・発酵温度・杜氏・絞る時期など様々なファクターや技術を経て完成します。だから、似たような日本酒をつくろうと思えばある程度可能です。でも甲類焼酎は違う。さとうきびと水だけです。シンプルな事ほど、マネできないのです。」
と宮﨑さん。

酒蔵の画像

この土地にだけ流れる大自然の恵みである良質な軟水。これは地形がもたらした産物であり、確かに同じものは二つと存在しない。

———ブランディングによるファンづくり?なんて次元ではない。

1923年の関東大震災のとき、本酒蔵は野菜、米、水などの救援物資を顧客に船で送ったという。当時テレビやラジオは普及しておらず、「関東で何か大変なことがおきた」との噂だけが情報源であった。驚くことに当時の顧客の多くから、今なお、ひいきにしてもらっているとのこと。
「贈った方は覚えていない(記録などがない)が、贈られた方はいつまでも覚えてくれているんですね。」
と宮﨑さんは言う。

キンミヤの輸送用大型タンク

1995年の阪神淡路大震災や2011年の東日本大震災の際も同様に救援物資を送った。阪神淡路大震災のときは、普段はキンミヤを運ぶタンカーで水を運んだ。東日本大震災のときには、一時的にミネラルウォーターが不足したことがあり、その情報を聞いた宮﨑さんは、緊急時ということで監督官庁の許可を得て、自社の伏流水をキンミヤのパックに詰め飲料水であることを示したステッカーを貼って送ったそうだ。
「粉ミルクを飲ませていたお母さん方にとても感謝されました。でも、ステッカーを貼ってあるとはいえ、キンミヤのパックから水を出してミルクをつくるのだから、見た目はおかしかったと思います。」
と、宮﨑さんは優しく微笑んだ。

キンミヤのスマートフォンカバー

企業として本当に大切な事、いや企業としてでなくその前に一人の人間として大切にすべきことは、当たり前とされてきた人を想う気持ちなのかもしれない。

話が少し反れてしまったが、キンミヤの味は水である、それがどういうことなのか少し触れてみたい。

———ポッピーで割ったら、わかる。

「ホッピーでキンミヤとその他の甲類焼酎で割ったら、その差は歴然とわかるんですよ。」
と宮﨑さんは語る。(ホッピーとは、ビール風味の飲料(アルコール度数0.8%))

約20年前に宮崎さんはホッピーの社長と食事をしていたときに
「なぜキンミヤがブランディングできているのか、何が違うのかわからない。」
と言うと、ホッピーの社長に
「何が違うって!?何がって!当たり前のようにおいしい水じゃないですか。」
と、驚かれたという。
「鈴鹿川の良質な軟水」の特徴を簡単に説明すると「なじみやすく、とけやすい」とのこと。だからホッピーなどで割った際にキンミヤが味を引き立たせる訳だ。

水のイメージ

それは案外正解なのかもしれない。地元に暮らしていると、意外とそういった魅力に気が付かないのかもしれない。


———日本一の水質を誇る宮川。

三重県南部を流れる宮川は、2015年の国の調査で、水質が最も良好な河川に選ばれた、日本を代表する清流である。

宮川源流の大台町

その源流に位置する大台町でミネラルウォーターを生産している門野正信さんにお話しを伺った。

門野正信さん
門野正信さん

「宮川は “水質が最も良好な河川” に選ばれた他の川に比べて、流域人口が多いんです。」
と語る門野さん。
それだけ源流の水質が良く、流域に暮らす方々の水への意識が高いということなのだろう。

———伊勢志摩サミットでも使われたミネラルウォーター「森の番人」の意外な使い道。

伊勢志摩サミットの画像

森の番人、ペットボトルのラベル。

伊勢志摩サミットで使われたミネラルウォーター「森の番人」は、ペットボトルの他にガロンや4Lパックもあり、飲料以外の使われ方もあるという。
門野さんにその辺りのお話しを伺った。

ごはんのイメージ

「「森の番人」は、そのまま飲んでもおいしいですが、お米を炊くとぜんぜん違うんですよ。」
と門野さんに教えていただいた。まずはお米を30分間、「森の番人」に浸す。その後、その後そのお米を研いで、炊くときにまた「森の番人」をいれる。すると古米も新米のように真っ白になるというから不思議である。
また、水質の良いこの地域でとれた米は、食感も良くおいしい、とのことだ。

コーヒーのイメージ

米に限らず、今回のインタビュー中に頂いたお茶やコーヒーも非常にマイルドだった。

三重の良質な軟水は、そのまま飲むだけでなく、お茶やコーヒーに使ったり、酒造りや作物を育てる際にとても有益に働いている、ということだ。

———三重の海の恵みは、山の恵みでもある。

宮川は伊勢湾へ流れる。

漁港のイメージ

宮川は豊富な山の栄養素を海に届けるといった役目もあるのだ。海藻の森を広げ、プランクトンを増やし、魚が集まり、三重が誇る海の幸を育てている。

米と神社のイメージ

海、山、川を有する三重県だからこそ、この連鎖が繰り返され、おいしい魚や作物を育ててきたのだ。

宮川源流のイメージ

お天道様が雲に隠れ、山に雨が降り注ぐ。

今日も三重には、山から海へ、恵みの水が流れ続けている。


(2016年11月21日取材)
企画編集:三重に暮らす・旅するWEBマガジンOTONAMIE運営本部
取材:村山 祐介(OTONAMIE代表)

取材協力

株式会社宮崎本店
http://www.miyanoyuki.co.jp/

有限会社森と水を守る会
http://mosaku.free.makeshop.jp/

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