食結び人
スペシャルインタビュー

肉、魚、酒。三重の食材が多くのシェフを虜(とりこ)にする
松浦仁志さん 四間道レストラン MATSUURA オーナーシェフ

肉、魚、酒。
三重の食材が多くのシェフを虜(とりこ)にする
松浦仁志さん 四間道レストラン MATSUURA オーナーシェフ

三重の食材は私も普段からよく利用しています。たとえば的矢かき。私の店に生産者を招き勉強会を開いているのですが、丁寧な殺菌、処理の方法を聞き目から鱗でした。カキの生食は敬遠されがちですが、「これなら大丈夫」と感じ、店では軽く火を入れるだけで使っています。火を入れるとより甘みが増しますし、三重のカキはミネラルの多い味がするんです。
あわびは火を入れると縮むことが多いですが、三重産のものは縮みが少ない気がしますね。刺身やステーキはもちろん、私は酒蒸しにして使うことも多いです。魚のエサになるプランクトンが豊富、そんな栄養価の高い海で育つから魚介類がおいしいのでしょう。

柔らかい伊賀牛、サシの細かい松阪牛、肉質のよい熊野地鶏と肉もよく使っています。それに三重は米、水がよいため、小さいながらも真摯に酒造りに向き合う酒蔵が多い。私の中で、酒処のイメージも強い地域です。
松阪牛をはじめとした食材のブランドネームに甘えることなく、真面目に取り組んでいて、技術改良に積極的な生産者もたくさん知っています。この先、新たな生産者がこれまでにない三重のブランド食材を生み出すのでは……と私も注目しています。

【PROFILE】
1970年、愛知県三好町生まれ。愛知県内の料理専門学校で学んだ後、リゾートトラスト、地元レストランなどで勤務。その際、約2年間、伊勢志摩で働いた経験も。2013年9月に四間道レストランMATSUURAを開業、15年には熟成古酒専門バーもオープンさせたばかり。

豊かな自然と人々の知恵が、おいしい食材を育んだ
村林新吾さん 元三重県立相可高等学校食物調理科教諭

三重県は穏やかな気候、豊かな自然に加えて、伊勢神宮という食物を司る神様を中心に、長い時間をかけて食文化を培ってきました。そのため三重県の食材は、魚も肉も野菜も、一つ一つ吟味された質の高いものばかり。人々が知恵をしぼり、手を加えて、育んできたのです。
松阪肉はまさに人が作り出した芸術品。すき焼きをおいしく食べるために、飼育法など工夫を重ねてできたものです。漫然と育てただけでは、あれほどのものはできません。黒アワビや伊勢えびなど、県産の魚介類は新鮮でおいしいと評判です。よい漁場があることが、その理由の一つ。木曾三川から流れる水と海水が合流する三重の海は、「わき上がる」と表現されるほど、昔から魚介類が豊富に獲れるところでした。

一時期は汚れていましたが、最近ではきれいな海を取り戻す活動が行われています。新鮮な魚介類が獲れるのも、こうした努力のおかげなのです。
農家の方々が作った野菜も、どれもおいしいものばかり。農薬などに極力頼らず真面目に作っているので、安心して口にすることができます。また、塩、醤油、味噌、日本酒などの調味料も、製法にこだわった品質の高いものが揃っています。

【PROFILE】
1960年、松阪市生まれ。三重県立松阪商業高校、大阪経済法科大学を経て、辻調理師専門学校で料理を基礎から学ぶ。卒業後は同校の教員として後進を指導。94年、食物調理科新設に合わせて相可高校に赴任。以来20年以上にわたって多くの調理人を育ててきた。