食空間を彩る匠の技

伝統と革新がつくりだす名品。
「四日市萬古焼」 「伊賀焼」 「尾鷲わっぱ」 「伊勢春慶」 「桑名刃物」...

伝統と革新が作りだす名品

四日市萬古焼

約300年の歴史を持つ焼き物「四日市萬古焼」。作品が変わらず永遠に残っていくようにとの願いを込めて「萬古(ばんこ)」と名づけられました。日本の冬の食卓に欠かせない鍋料理に使われる土鍋では、国内で高いシェアを誇っています。土鍋は本来、急加熱、急冷却といった急激な温度変化には弱いのですが、その弱点を克服するために四日市萬古焼は、原料にペタライト鉱石を加え、耐火性と耐久性を飛躍的に向上させています。四日市萬古焼の土鍋には、伝統と革新の技が息づいているのです。

茶人に愛された独特の風合い

伊賀焼

緑色のビードロ、赤く燃える火色、黒いこげなど力強い造形が特徴といわれる「伊賀焼」。そのルーツは、1300年ほど前にさかのぼります。14世紀、茶道が盛んになると無駄のない質実剛健な作りが多くの茶人に愛されるようになり、伊賀焼の名が世に広まりました。伊賀焼の原料は、400万年前琵琶湖の底だった地層から採取される粘土で、多孔質で熱に強い特徴があります。使う人の手によくなじみ、人々の日常の中で今日まで愛されてきた伊賀焼は、その独特の魅力ある味わいを現代に受け継いでいます。

良質な檜で作る伝統品

尾鷲わっぱ

尾鷲わっぱは尾鷲地域の良質な檜を使用した漆器で、17世紀頃から作られています。中に入れた食品が冷めにくく湿気を吸うので腐りにくいことから、弁当箱として多くの人に愛用されてきました。水に浸けて柔らかくした檜材を曲げ、継ぎ目を桜の皮で閉じ、漆を塗るなど、完成までに要する工程は実に45工程。そのすべてが手作業で行われ、伝統の手法が守り続けられています。使い込むほどに色彩と木目の模様の美しさが深みを増し、使う人を魅了してやみません。

暮らしに息づく工芸品

伊勢春慶

伊勢春慶は伊勢の伝統的な漆器で、重箱、膳、盆などが多く作られています。16世紀頃から作られ始め、17世紀に入ると伊勢は漆器の一大産地として全国に知られるようになりました。檜の一枚板を組み合わせた丈夫な作りで、柿渋を下塗りし、その上に透明の漆を塗って仕上げます。このため漆塗りの下に木目が透けて見えるなど、素材の美しさを生かしていることが大きな特徴です。

日本刀作りの技を生かした刃物

桑名刃物

14世紀頃から日本刀の名工を多く輩出した桑名は、19世紀頃になると包丁やハサミなどの暮らしの中で使われる刃物類の産地となりました。伝統的な日本刀の製造技術を応用した刃物は大変切れ味が良く、現在まで全国的に高く評価され続けています。