松阪で産まれ、松阪に生きる。
私達の食文化はかの有名な松阪牛
ではなく、鶏焼肉。
下町の食文化。
夕陽が沈む頃、まるで家に帰るように集う場所。
煙の匂い、テレビの音、いらっしゃいの声、あがる炎の暖かさ。
身体に、心にすとんと落ちてくる。
ああ、これこれ!
この味だ。
噛めば噛むほど味が出てきて癖になる親鳥。
締まった身にはファンも多い。
ぷりぷりに焼きあがる、脂がとろけるホルモン。
鶏ではないがこれも定番。
味噌味のたれが濃厚な脂と相まって、お酒もごはんも進むしろもの。
気取らずに、ただただ頂きます。
この笑顔で迎えてくれる次のお店。
「ただいま」
この言葉が似合う場所。
明るい笑顔、元気な声が最高の調味料。
あぁ、幸せってこうゆう瞬間。
大それたことじゃなく、笑う事、食べる事。
心の底から温まる。
美味しくて、どこか懐かしくて、飽きない味。
頂きます。
そしてやっぱり牛もね。
つい自慢しちゃう、松阪が誇る味。
のれんをくぐって、待っているのは。
松阪牛。
塩とわさび。お肉の味を存分に味わう。
見極める。待ちきれない。
噛む、ではなく、歯でほどく食感。
肉の旨み、脂の甘み、絶妙なバランス。
松阪牛のホルモンはこの辺りにしか出回らない。
ジューシー。
あぁ、溜め息が出るよ。
満足感に包まれた、そうあの感じ。
左手にお茶碗持って、お肉とごはんを駆け込む。ほうばる口はついいっぱいになってしまって。
焼ける間はキムチもつまんで。
炎までもが肉を食べようとしているかのよう。
ここは下町。
挨拶して微笑めば、笑顔と言葉が返ってくる。
たわいもない話。
「あんたどこの人や?」
「この辺か?」
「あんた松阪かー」
小さな町、色んな人が繋がっている。
暖かい。
食が人を繋ぎ
人が食文化を繋ぐ。
(2016年10月23日取材)
企画編集:三重に暮らす・旅するWEBマガジンOTONAMIE運営本部
取材:橋本 奈々(OTONAMIE公式記者)